グレーゾーンだった海外FX関連ビジネスのひとつであるミラートレードに関して、金融商品取引法違反(無登録)による全国初の逮捕者(浜本 学泰氏、岩井 崇氏、川口 剛氏、須方 保年氏)が出ました。

ざっくり要点
・海外FXコピトレの日本住居者勧誘は違法
・海外FXコピトレの配信は裁量/EAを問わず違法
・オフショア会社も捜査対象

以下、ニュース記事や調査結果をつらつらと書いていきます。

WEBニュースは流れて消えてしまいがちです。
記録として残しておくため、冗長ですがご了承ください。

無登録で投資家から資金を預かり、外国為替証拠金取引(FX)をしたなどとして、警視庁生活経済課は12日、東京都江東区の会社員、岩井崇(47)、中野区の投資セミナー運営会社役員、浜本学泰(たかやす)(51)の両容疑者ら男性4人を金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで逮捕したと発表した。

岩井容疑者らは2019年3月~23年11月ごろ、プロの投資家のFX取引を自動で反映する「ミラートレード」と呼ばれるシステムを運営し、無登録で投資家ら約1500人から計約16億円を集めたとみられる。

岩井容疑者ら3人の逮捕容疑は23年2~11月ごろ、投資家5人から約800万円を預かり、「ミラートレード」の手法を使うなどして、国の登録を受けずにFX取引をしたとしている。

浜本容疑者は23年6~9月ごろ、岩井容疑者らが運営する「ミラートレード」のシステムを通じ、自身のFX取引を模倣させ、無登録で投資家3人に為替売買の助言をした疑いがある。警視庁は4人の認否を明らかにしていない。

警視庁によると、浜本容疑者は投資セミナーで、「ミラートレードで専門家に任せた方が確実に利益が出る」と勧誘。紹介料や、取引で得た利益の一部を成功報酬として受け取っていたとみられる。

 警視庁は、事件で使われた「ミラートレード」のシステムの開発者からも、金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで任意で事情を聴いている。

【2024/11/12 毎日新聞】無登録でFX取引疑い、4人逮捕 ミラートレード使い16億円集金か

浜本容疑者の逮捕容疑は昨年6~11月、自身が運営する投資セミナーの利用者にミラートレードの利用を勧め、無登録で投資の助言をしたというもの。
 浜本容疑者はセミナーで「自力でFXで利益を出すのは難しい」などと指摘し、ミラートレードで専門家に任せれば確実に利益が出せるなどと呼びかけていた。出資した人の多くは利益が出ていなかったという。
【2024/11/12 朝日新聞デジタル】「ミラートレード確実に利益」16億円集金か 無登録営業容疑で逮捕

客から昨年11月、「出金できなくなった」との相談が警視庁に寄せられるなどして発覚した。同月、取引サイトも停止し、顧客に投資資金が返金されなくなった。
 ミラートレードを巡っては「FX初心者でも簡単に稼げる」とのうたい文句で勧誘され、トラブルになる事案が相次いでいる。
【時事ドットコムニュース】無登録でFX取引容疑、4人逮捕 「ミラートレード」で16億円集金か

警視庁は、会社員の男らが2019年以降、個人投資家らから手数料や成功報酬を受け取り、会社役員の男に顧客の紹介料などを支払っていたとみている。
【読売新聞オンライン】無登録でFX取引の疑い、「ミラートレード」運用の男ら4人逮捕…1500人から計16億円集金か

要点を整理すると、ミラートレードは助言業務に該当し、ミラートレードのシステム開発者も罪に問われる可能性があるようです。

記事を書いている段階では書類送検されていませんが、家宅捜索は済んでいますし、違法となる公算だと見ています。

違法との判決がされれば、コピトレ・PAMM・MAMcBots(cTrader)等を用いた日本在住者への営業行為はアウトとなります。
このあたり、黒寄りのグレーだったと認識していましたが、今回の件でハッキリしそうです。

逮捕されたうちのひとり、浜本学泰氏の経歴は以下のとおり。

証券アナリスト協会検定会員
国際公認投資アナリスト

1996年 一橋大学商学部商学科卒業 
    専攻:外国為替、国際金融
1996年 野村證券株式会社入社
2002年 メリルリンチ日本証券株式会社入社
2003年 独立系投資顧問会社入社
2008年 個人投資家としてFX、株式、日経平均先物取引を開始。
2009年~個人向けにトレード手法を解放して、教え始める。

【引用元】あなたもFX主婦を目指そう♪ (勧誘LP)

掲載経歴に偽りはないようで、実際に日本証券アナリスト協会のHPの会員名簿にも名前が記載されています。
また、投資界隈では有名な出版社であるパンローリング社から3冊本が出版されています。

経歴から、浜本学泰氏はFX業界や法には詳しいと思われます。

そのため、ギリギリセーフだと思っていたらアウトだった、コピトレ運用が赤になって失敗した、という踏み外し事案である可能性も考えましたが、どうやら実態は単純ではなさそうです。

報道された動画によると、口座開設は「Appos Reward」
逮捕された4人は「APPOSホールディングス」の実質的運営者とされています。

調べてみたところ、国内にその名前の法人は存在しません。
入手した資料によると、どうやらノミニー(代理人)を使ったパナマ法人のようです。

ノミニーはオフショア法人では一般的で、オーナーを隠す目的で使われます。

後ろめたいことがある方が法の裁きを逃れるために用意されている制度と言っても過言ではないものの、当該国では合法です。

今回は違法行為に関する捜査でオフショア法人にもメスが入るものと推察されます。

集客の際に使われた資料には、 運営会社「APPOSホールディングス株式会社」、接続先FX業者「AS ACCESS SOFT FX」 とあります。

Access Soft LimitedのHPを遡ってみると、ベリーズ法人との表記があったり、セントヴィンセント・グレナディーン諸島(以下SVG)のFSAに登録してあると記載されていますが…

Contact us の連絡先電話番号は +852 で香港だったりと、いかにもペーパーカンパニーであり運営実態は登記住所や登録住所とは別に存在することが窺えます。

Access SoftがSVGFSAに登録されていることは確認できましたが、そもそもSVGFSAはFX営業を許可していません。(下記画像は日本語訳表示)

調査兵団ですら聞いたことないような超マイナー業者ですし、なぜこの業者を指定したのでしょうか。

ありがちなパターンとしては、顧客の負けを見込んで作ったB-Book業者だった可能性が考えられます。

ただ、MT4取引サーバーは既に存在しませんし、詳細は不明です。
(PC版MT4を持っている方がいましたらサーバー関係のファイルを提供していただけますと幸いです)

投資戦略は様々なものから選択可能だったようですが、複数の報道から鑑みると警察はコピートレード=投資助言と判断したようです。

X上でAppos Rewardの運営に関する発言を確認できました。

現在Access SoftのHPは存在しませんが、少なくとも2017年5月から2022年11月半ばまでは稼働していて、顧客にはA-Bookであると説明していた模様です。

Access Softは確認できる限り、2017年7月にはFX業者としてサイトが稼働しています。

以前のドメイン所有者であるシステムエンジニアの方は2013年からaccess-soft.comを運用していましたが、2016年4月30日にドメイン自動更新が切れています。

FX業者としてのaccess-soft.comは2017年5月以降のHP運用が確認できました。
以前のドメイン所有者はおそらく無関係であると思われます。
放棄されたドメインを再利用することでSEO対策や社歴感を出そうとする手法はよくあります。
WEBページには2013年から創業していたかのような記載がありましたが、信憑性は低いです。

FX業者としてのaccess-soft.comは、ドメイン取得者情報ではパナマ在住としていますが、サイトのソースコードを見ると、フォルダ名に “emoji” が存在するため、実運用者は最初から日本人だったと推察されます。

実際にA-Bookであれば営業コストが嵩み破綻した可能性もありますが、B-Bookであれば海外FXを隠れ蓑にした事実上のポンジスキームであった可能性もあります。

被害者の人数や金額、実際には顧客が損をしていたことを考慮すると、後者の可能性が高いように思います。

自称A-Bookかつ約定の良さを謳っていたためか、玄人の方もチャレンジしていたようです。
投稿内容から、運営実態がどのようなものであったかが伺われます。

実際に使ってみたらクソ業者だったり、利益が出ても一方的に訂正されてなかったことにされるのはありがちです。

元本すら返さない業者は極稀ですが、存在します。
翠さんは業者リスクを含め、そのあたりも理解されているようです。

もはや引用がまとめになってしまいました。

この件は刑事事件化したことで民事でも勝てる見込みが出てきましたし、被害回復給付金支給制度を適用できるかもしれないので、被害を受けた方はまず警察へ相談されることを推奨します。

WEB上のプラットフォームでコピートレードを提供するのも投資助言に該当すると考えられるため、無登録でそのようなサービスにEAを提供している方には逮捕リスクが生じています。

身に覚えがある方はさっさと提供を辞めたほうが良さそうです。