現在、TRC20 USDTの流通量は620億トークンを超え、全ネットワークにおけるUSDT総供給量の半数以上を占めています。
既に海外FX入出金のスタンダードとなっていて、ICMarketsでもドルフィンウォレット等で自由に入出金できます。
ただ、ウォレットは送金する際のコストが高く付くので利用したくないと感じている方が多いように思います。
TRC20 USDTは事実上のグローバルスタンダードなので、しっかり対策してコストを抑え、スマートに利用したいものです。
TRC20の送金コストを下げる対策としては以下の2つがあります。
対策1. 送金先TRC20アドレスのUSDTを残しておくこと
TRC20を送る際に必要なEnergyは送り先アドレスの状況によっても変化し、TRC20 USDT残高0 のCEXアドレスに送る場合に最も高くなる仕様があります。
この理由の一つは、チェーン上にUSDTの残高を新たに書き足す行為にコストがかかる仕様にあります。
送り先TRC20のUSDTの残高が0.1USDTでもあれば、新規で書き足すためのコストはかかりません。
CEXコントラクトアドレスの中身はCEXの都合でユーザーが意図しないタイミングで更新される場合があるため、送る前にTRONSCANで確認したほうが良いです。
空っぽになっていた場合、自分で自分のCEXアドレスにUSDTを送るのも手です。
CEXから他アドレスへTRC20で送る場合の手数料は1TRX程度ですが、他アドレスから残高0のCEXコントラクトアドレスへ送る場合にかかるコストは、倍どころでは済みません。
対策2. Energy先払いシステムを利用する
TRONは送金やスマートコントラクトの呼び出しに対して、「Energy」と「Bandwidth」という2つのリソースを消費することで手数料をまかなっています。
Bandwidth(バンド幅)
主に通常のTRX送金やデータ送信で消費されます。
毎日アカウントに無料で付与される量が決まっていて、それを超えるとTRXを払って追加購入します。
Energy(エナジー)
スマートコントラクトの実行で主に使われます。
TRC20トークンの送金は「スマートコントラクトの呼び出し」なので、Energyを多く消費します。
TRC20トークンは、TRON上の「スマートコントラクト」によって管理されています。
送金の際には、以下のような処理にEnergyが使われます。
・送金元の残高確認
・送金先の残高更新
・新規アドレスなら残高データの作成
・イベントの記録や検証処理
計算資源として必要なEnergyのぶんだけ、送金の際にTRXを消費します。
一部の大手ウォレットでは、送金前にTRXを凍結してEnergyを得ることを推奨する機能がありますが、ドルフィンウォレットには搭載されていません。
利用するウォレットにTRX凍結機能がなくても、Energy先払いを提供する外部システムを利用することで、消費するTRXを抑えることが可能です。
代表的なEnergy先払いシステムは以下のとおりです。
・Polar Bear
USDT送り元アドレスから指定TRC20アドレスにTRXを送ることでEnergy先払い
・TRONSAVE
USDT送り元アドレスを入力して、Tron Wallet APIもしくはTRXを指定アドレスへ送ることでEnergy先払い
Energy先払いサービスを利用することで、TRC20の送金コストは8割以上安くなります。
送金コスト見積もりについて
TRC20の送金コストは基本的には事前見積もりが可能です。
チェーンが提供するAPIを用いて計算されているため、必要帯域は正確です。
オンラインチェッカーも存在し、簡単に把握できます。
TRON energy calculator
ただし、必要Energyは必ずしも正確に見積もれるわけではありません。
送金先コントラクトアドレスの内部処理はそれぞれですし、CEXによっては残高の有無に関わらず高Energyの処理をしている可能性もあります。
一度でも送ったことがあるアドレスならTRONSCANから履歴を追えばコストが分かるので、余分な支払いをしないために把握しておくとよいです。
実際にどのくらいコスト削減ができるのか
この記事で比較するために、しっかり無駄に払ってきました。
1TRX 51.49 JPY での計算です。
CEX(bybit)の残高0 TRC20 USDTアドレスに、ドルフィンウォレットからそのまま支払った場合の取引コストがこれで…

同じくCEX(bybit)の残高あり TRC20 USDTアドレスにEnergy先払いで支払った場合の取引コストは以下のとおりです。

Energy先払いした3TRX+1TRX(TRX送金コスト)を足しても224円なので、約84%のコスト削減ができました。
TRXはUSDT需要が非常に高く、TRX価格は継続的な値上がり傾向にあります。
代替チェーンが出てくるまでは、スマートに利用したいですね。